怖がりな性格①

介護保険の福祉用具に対して、常に言われているキーワードがある。

「高い」という一言だ。

何と、どう比較して高いと言っているのかが曖昧なままで、「高い」というキーワードだけが独り歩きしているように思う。

介護保険サービスごとの費用は、厚生労働省が発表している費用統計で毎月確認することができるが、被介護者に対する価格をサービスごとで確認すると、福祉用具貸与に関する費用は下から数えた方が早いという現実を、誰も観ようとしないことが不思議で仕方ない。

 

そんな状況でも、福祉用具の貸与にかかる費用をさらに値下げさせようという動きが、国の方針として進んでいる。

この方針に基づく会議の場で出ているテーマは、「貸与品に設定している価格の妥当性を説明しろ」という内容である。

貸与品の価格が妥当であるというためには、貸与上代設定、商品の仕入れ価格と減価償却、継続使用の流通に掛かるコスト、流通福祉用具貸与事業所の利益率を提示しろというものだ。

介護保険は国の制度なので、月額費用に含まれる義務がある。ザックリ言うと、適合選定、納品回収運送費、継続使用の可否判断、これらに関する書類管理が、福祉用具貸与事業所の義務として明記されている。

「安全な福祉用具を提供する」と言う一文もあるので、この一文に消毒とメンテナンスも含んでいるという解釈がされている状態である。

 

問題は、「安全な福祉用具を提供する」である。この一文はそれ以上でもそれ以下でもなく、「安全」であるために何をしなければならないかという詳細内容が記されていないのだ。

 

消毒については、清潔かどうかもわからない雑巾で清拭していても、アルコールを使っているから、それが消毒だと言い切れば、それ以上追及することはできない。目に見えない物に対しては、誰もが寛容なのではなく、気がつかないのだろう。

 

「車いす安全整備士養成講座」という車椅子の整備に関する講座を運営している立場でモノを言うなら、介護保険貸与機器に求められている「安全」に含まれるメンテナンスは、実態として「テキトー」の一言に尽きているとしか言いようがない。

 

 

外見が綺麗かどうかに注力し、色あせや傷に対しての補修作業として、塗装などに気を配っていても、ネジが緩んでいるかどうか、金属疲労はどうかといった内容を確認するためのメンテナンスマニュアルを整備している事業者は、ほんの一握りだと言わざるを得ない。

 

そういった内容を知っているからこそ、自分の親に提供された福祉用具は、(選定もだが)納品時の動作確認だけでなく、安全確認を自身で行った記憶がある。

この安全確認のための作業を自分で行わなければ、安心できない、つまり、怖くて使えないというのが、私の感覚なのだ。

「もし壊れたら、メーカーにクレームを言って、機器の補償、ケガの補償はされるから、大丈夫です。」ということを言う人がいるが、壊れたものが使えない間はどうするのか、ケガをして苦しむことに関してはどうなのだという観点が抜けた、恐ろしい発想でしかないように思う。

 

本来、介護保険貸与の商品に関しては、機器自体の設計開発上の問題でなければ、使用後に回収された商品は、製造者以外の他社の人間が、自分の勝手な水準や判断で、消耗品パーツの交換を含むメンテナンスをしているのだから、そのメンテナンス作業が原因で機器の破損に繋がった場合、責任は製造者にはない。

「勝手な判断で機器をいじって、事故が起きたから、製品のせいする」のでは、製造者はたまったものではない。

 

介護保険発足時を知っている人なら誰もが知っていることだが、かなりの見切り発車で始まった介護保険において、色々な制度上の整備が進んできたにも関わらず、この貸与品の流通上の問題点には、誰も触れてこなかったのは、事実である。

 

といった背景を踏まえ、経産省→日本規格協会→JASPECという流れで、「公的介護保険制度における福祉用具貸与品のメンテナンス作業に関する一般要求事項」というJIS規格の原案を新たに作成している。

平たく言うと、「介護保険制度で使われている福祉用具のメンテナンスをしている事業者は、自分達が出荷している貸与品が安全である根拠を明確にできるようにするために、ちゃんとマニュアルを持って、そのマニュアルを実行できる人を育成しているという仕組みを持ちなさい」ということだ。

 

自分が年老いた時には、納品された福祉用具が安心して使っていても良いのかどうかなどと、わざわざ気にかけなくてもよい社会になっていて欲しいと思っているのだが、逆に、知らなければ「怖い」と思わなくてもよかったのに・・・とは、どう考えても思えそうにない私は、「怖がり」なのだろうか・・・。

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