被災地復興支援車椅子メンテナンスIN熊本その②

この被災地復興支援車椅子メンテナンスでは、訪問した施設で短時間ではあるが、セミナーを行うようにしてきた。

内容は、「誰でもできるメンテナンス」と、「メンテナンスを行わず車椅子を使用することによって起こり得る事故」を主とし、希望に応じて「シーティング」や「ひやりハット」を行っている。

 

今回は、三ヵ所の施設のうち、セミナーを行ったのは一ヶ所だけで、時間は30分だった。

「車椅子の継続使用において必要最低限の内容を伝えるだけしかできないなぁ」と思っていたが、施設長さんからのリクエスト「シーティングについても触れてほしい」との一言。

 

シーティングについて説明する上で、私が必要と考える最低限の知識は、「人体の筋骨に関するメカニズム」と「機器の構造」だと考えている。

「人体の筋骨に関するメカニズム」の例を挙げると、膝裏にはハムストリングから下腿に繋がる腱があり、座位で継続的な負荷がかかると痛みを生じるとか、滑り(仙骨)座りをすると腹圧がかかり心肺機能が低下したり、誤嚥を誘発したりするとか、腋が開いていると腕力が活かせないといった内容等である。

「機器の構造」で例を挙げると、滑り(仙骨)座りをすると車椅子駆動や操作が重くなる理屈や、車椅子の前輪キャスタ車軸位置を変えるだけで座面角度を変えると、場合によっては進めなくなり自立の阻害や介護力負担の増加に繋がるといった内容等になる。

 

正直言って、シーティングが適切に行えるようになるための知識を、30分で網羅するなんてお手軽な方法はないし、重要度で何が一番なのかという優先順位もないと思う。

「シーティングの○○○について説明して欲しい」というピンポイントであっても、「30分で話せる内容は、詳細を端折るので、ある程度の事前知識がある人なら、レクチャーを活かせるかもね」といったレベルの話にしかならないとも思う。

 

で今回は、咄嗟に

①車椅子の駆動輪に空気を入れる必要性と、不足していることで起き得る事故事例

②延長ブレーキレバーをラップの芯で行っている際に起き得る事故事例と改良策

③フットサポートの高さ調節と座奥行に関連する滑り(仙骨)座り誘発の問題点と改善策

④座幅の不適合による立位不全誘発の問題点と改善策

の四点に絞って説明をしてきた。

 

簡単な実演と体験を踏まえて説明したので、内容の理解はしてもらえたように感じたが、日常業務を踏まえて、活用してくれるか否かは疑問である。

 

短い時間でセミナーや講師を依頼されることがよくあるが、そんな短い時間で身につけられる知識は、・・・正しい言い回しかどうかはさておき、「たかが知れてる」と思う。

質問する時に、「何がわからないかが、わからない」という言葉をよく耳にするが、問題視している内容について、何をどれくらいの時間学ぶ必要があるのかがわからなければ、「短時間でお手軽にわかりたい」というのは、当たり前なのかもしれないが、「~について聴きたいのだが、必要な時間はどれくらいになるのか」という質問は滅多にない。

 

目的を明確にすることの重要さを、改めて考える一コマである。

 

ついでに、もう一つ。

復興支援とは言え、メンテナンスをするのはその施設の備品であり、継続使用するのはその施設であり、その施設の利用者である。

メンテナンスに要する時間が決して短くないのも事実だが、自分達で今後メンテナンスを行う気があれば、代表として一人でも構わないので、同席して内容を見て、技術を身に着けることの必要性を感じて欲しいと、いつも思う。

 

「メンテナンス現場に立ち会わない」、「セミナーも受けない」という姿勢だと、いずれメンテナンスが必要になった時に、また「無料でメンテナンスさせてあげる」というスタンスでいるのだろうかと思ってしまう。

メンテナンスを行わないことによる問題や、事故に至ることについて認識がないからこそ、メンテナンスをしなければならない車椅子ばかりになっているのだろうが、プロ集団が大人数でメンテナンスしている姿を観て、「メンテナンスしなければダメなんだ」という発想に至らないことが不思議でならない。

 

良かれと思って行っている復興支援車椅子メンテナンスだが、これも目的を明確に伝えて行わなければ、「悪意のない問題視すべきボランティア」になってしまっていないのだろうかと、とても気になってしまう。

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