車椅子の「ヒヤリハット」

JASPECは、福祉用具を主とした工学的評価を行う第三者試験所です。

 

「福祉用具を主とした」とは、福祉用具でJIS等の規格があるものだけではなく、「高齢者や障害者が使用、もしくは介護者が使用する用具であって、規格が存在しないものを含んだ用具並びに機器」を試験主体にしているという意味です。

 

「工学的評価」とは、試験を行う対象の用具や機器が、工業製品として求めるべき強度、耐久性、安定性に関する試験を行い、試験結果を客観的事実に基づき提示することを指します。

JIS等の規格に基づいた試験を認証機関から依頼された場合は、その試験結果を認証機関に提出しますが、製造過程でのプロトタイプ時点での工業製品としての各試験を製造者から依頼された場合は、その試験結果を依頼元である製造者に提出します。製造者が依頼元である場合は、試験の結果が目標数値に達しないor破損した際は特に、試験結果だけではなく、単純な例で言うと、どの様にすれば壊れなくなるかといった相談を受けることもあります。

 

工業製品としての安全性が担保されているからと言っても、使いやすいか否かがイコールにならないという点が、福祉用具の難しいところであり、使用する環境や使用者自身の能力などによっても、機器の有効性の評価は変わります。

同じ用具並びに機器なのに、Aさんにとっては有効的であるにも関わらず、Bさんにとっては無用の長物であったり、場合によっては危険な製品である場合があるということです。

工業製品としての安全性が確保されていなければ、話を続けるだけ無駄になってしまうので、まずはその安全性を担保するための工学的試験は必須です。
(この試験を行っていないのに、流通している用具や機器はたくさんあります。)

 

この最低条件である工学的安全性をクリアしていても、事故が起きていることは周知の事実なのですが、その理由は、単体の原因であることもあり、複数の原因が複合していることもあります。

 

そんな中から、今回は車椅子使用でのヒヤリハットのひとつ「腰椎圧迫骨折」について、その原因を記述してみます。

Radiograph Veterinary Pelvis

車椅子を使用していて、腰骨が圧迫骨折になってしまう状態は、「しりもち」をついてしまい、落下速度と上半身の体重量と骨密度が重なった結果、脊柱が圧縮されてしまうという、単純な話です。

 

年間にかなりの数の圧迫骨折が起こっているにもかかわらず、なぜこの事故がなくならないのでしょうか?

「しりもち」で入院を余儀なくされる様なケガをしているにもかかわらず、「しりもち」をつかないように徹底できない理由はなぜでしょう?

 

「しりもち」をつくメカニズムを明確に理解していれば、誰も「しりもち」をつかなくなりますが、誰も「しりもち」に至るメカニズムを明確にしようとしていないことが問題であると言えます。

 

このメカニズムを明確にするために、理解しなければならないことが、3個あります。

①立ち上がり座り込みの際の、姿勢(重心バランス)制御

②車椅子の構造(レッグサポート)

③タイヤと駐車用ブレーキの関係

この3点が明確に理解できていないことが理由で、「しりもち」をつきやすいor「しりもち」をつかせられ易い状態になっているのです。

内容的にも、小学生が理解できるレベルのことでしかないのですが、言われて初めて「あぁ、なるほど」という人が多いのは、あまりにも単純な話すぎて、改めて考えることがないからなのではないでしょうか。

 

ちなみに、この理屈を理解している私は、自分が車椅子ユーザーになった場合、軽くて安価であっても、一般的な標準型車椅子を使用することは絶対にありません。

なので、基本的には他人にも勧めませんし、自分の親にも使わせる気はありません。

 

こんな理由をきちんと説明できる人を増やしたいので、JASPEC年間定例セミナーの8月(テーマ:車椅子)の講義では、機器の機能分類や人体との連動、安全な継続使用のための簡易メンテナンスなどについて、説明しています。

興味があれば、毎年8月に行っていますので、是非ご参加下さい。

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